味覚嗜好判定キットを事業化。ぴったり合う食を提供し、日本中をおいしく、健康的に。【カゴメ株式会社】

創業以来121年、トマトなど自然の恵みを活かした商品を通して人々の健康に貢献してきた「カゴメ株式会社」(以下、「カゴメ」)。トマトケチャップやソース、野菜ジュースなどの商品は、いまや食卓に欠かせない味となり、日本中の人々から愛されています。

 

そんなカゴメで食にまつわる研究をもとに新規事業を考案しているのが、「イノベーション開発部 新規事業開発ラボ」。2020年秋からはCAN EATのコンサルティングを活用し、好みの味の濃さを判定できるキットを活用した新規事業の開発を進めてきました。

 

新規事業開発の流れやそれまで直面していた課題、CAN EATと連携するに至った理由、味覚嗜好判定キットの開発秘話や現在の手応え、これからの展望について、新規事業開発ラボの坂本さんに伺いました。

CAN EATと共同で事業化。社内研究から生まれた味覚嗜好判定キット

━━新規事業開発ラボでは、具体的にどのようなことをしているのでしょうか。CAN EATと共同で取り組んでいる事業についても教えてください。

カゴメが持続的に成長していくための「新しい事業の種」を作る仕事をしています。これまでにカゴメが培ってきた技術や、社外技術との組み合わせを活用し、社会やお客様の困りごとを解決しながらもしっかり対価をもらえる事業アイディアを描き、さらに小規模で実際にお客様に使用してもらうことで事業としての可能性を検証します。

 

CAN EATの協力を得ながら進めているのは、ポップコーンを食べるだけで好みの味の濃さを判定できる「味覚嗜好判定キット」を活用した新規事業の開発です。この技術を活用し、その人にぴったり合う食品を提供していきたいと考えています。

 

━━カゴメさんといえば、「野菜生活」など食品のイメージが強かったのですが、健康サービス事業など、多様な取り組みを進めていらっしゃることがわかって驚きました。味覚嗜好判定キットも、とても面白い試みですよね。新規事業のアイデアは、どのようにして生まれるのでしょうか?

 

新規事業のアイデアの出発点はふたつあります。ひとつは「自然をおいしく楽しく」といった会社のブランドステートメントや、カゴメが大事にしている「食による健康寿命の延伸」、「農業振興・地方創生」。これらに通ずる何か新しいことができないかを考えています。全社でビジネスプランの募集も行っていますね。

 

もうひとつは、カゴメの研究から生み出された特許や論文などの成果をもとに、「今の社会にあてはめるとこんな価値を提供できるのではないか」と考え、新しい事業につなげていく方法です。味覚嗜好判定キットも、研究の過程で生まれました。

 

━━なるほど。研究が先の場合もあるのですね。では、味覚判定キットに使われている技術そのものは、どのようなきっかけで生まれたのですか?

 

実は、もともとは社内用に研究・開発した技術だったんです。

 

食品メーカーなので、商品をいろいろな人に食べていただいた上で「おいしい・おいしくない」などの味の評価を出すことがあります。そのなかで、食べる人はそもそもどんな味覚特性を持っているのだろう?と考えるようになりました。味覚特性を知り、ターゲットをしっかり決めてから実験をするほうが、より適切な評価ができるようになるのではないか、と。

 

そこで、社内で味覚特性を評価する手法として、味の濃さの好みを判定できる技術を開発しました。それが味覚嗜好判定キットの原点です。

 

━━最初は社内の人の味覚を評価するためのものだったんですね。それが新しい事業につながるというのは興味深いです。

おいしさについて研究をしている若手の社員と「新しいことができたら面白いよね」と話していたときに、味の濃さの好みを判定できるキットの話になり、社内だけで完結させるのはもったいないのでは?と思いました。

 

味の濃さの好みに関するデータがあれば、その人にぴったりな食品を提供することにつながるのではないかと考えたのです。まずはいろいろな人に試してもらおうということになり、健康セミナーなどに少しずつ取り入れはじめました。

 

「その人にぴったり合った食品を提供したい」CAN EATと共同で事業を進める理由

 

━━CAN EATと一緒に新規事業を進めることにしたのはどうしてなのでしょうか。きっかけや理由を教えてください。

 

味覚嗜好判定キットでは味の濃さの嗜好を判定できますが、その情報だけをもとに完全にぴったりな食品を提供するのはなかなか難しい。他の情報と掛け合わせられないだろうかと思いあぐねていた矢先に、オープンイノベーションプラットフォームでCAN EATからアプローチがあり、面白い企業だなと興味を持ちました。

 

CAN EATは、食事制限やメニューの素材の好き・嫌いといった食事嗜好のデータを活用してサービスを提供しています。「その人にぴったり合った食品を提供したい」という私たちの目的と親和性が高く、一緒に開発を進めたら面白いことができそうだと感じました。

 

━━弊社と連携する以前は、事業化はどれくらい進めていたのでしょうか。どんな事業にするか、具体的なイメージはありましたか?

 

進めてはいましたが、まだ具体的なイメージは湧いておらず、何ができるんだろう?こんな面白いことができそうかも?と想像している段階でした。イベントなどで試してもらう機会はありましたが、事業としてはまったく形になっていませんでしたね。

 

CAN EATにコンサルとして入ってもらうようになってから、具体的なイメージを描けるようになり、事業化に向けて本格的に動き出しました。

 

━━ベンチャー企業と共に事業を進めていくことに対して不安はなかったのでしょうか。

 

不安よりも期待のほうが大きかったです。

 

食品メーカーの研究所は、基本的に半年・数年といった長期のサイクルで動いています。もちろんじっくり腰を据えて行う研究も大切ですが、チームの若手メンバーには、これからの時代に必要なスキルや知識として、ベンチャー企業の意思決定のタイミングや考え方、スピード感を体感してほしいと思っていました。

 

CAN EATとは1、2週間に一度ミーティングをしていますが、その度に必ず何かしら決めて、動いてくれます。チーム全体にそのマインドが浸透し、ひとつミーティングが終わるごとに、「次に向けてどう動けばいいだろう?」とメンバー全員が考えるようになりました。チームとしての成長を感じています。

 

人と食、人と人をつなげていく。共同開発から生まれた新たな視点と可能性

 

━━事業を進めるなかで、現在の手応えやわくわくしていること、上手くいっていると感じている部分があれば教えてください。

 

実験を重ねていく中で、当初の想定通り、食材の好みと味の好みを合わせるとその人にぴったりなものが提供できそうだなということがわかってきました。実際にレストランでテストを行っていますが、オーナーのみなさんからは、「面白い」「商品化されたら使い続けたい」といった前向きなお話をいただいています。実用化できる可能性が出てきたと感じています。

 

CAN EATは飲食店との関わりが深いので、飲食店がどんなことに困っているか、どんなふうにコミュニケーションを取ればいいかといったことにとても詳しいです。肌身で感じてきたことを教えてくださるので助かっています。

 

また、「人と人」を結びつけるという視点を得られたことも大きい成果ですね。当初は「人と食」を結びつけることしか考えていませんでしたが、婚活大手の株式会社IBJが運営する「PARTY☆PARTY」と一緒に行った婚活のイベントなどを通して、食が人と人の結びつきの起点になりうることを実感しました。

<婚活イベントでは、味覚嗜好判定キットを活用して味覚の合う人同士をマッチングした>

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000046724.html

 

━━婚活イベントは、CAN EATとしても面白い試みだったと感じています。当日の様子を見に行ってみて、いかがでしたか?

 

食の話題は想像以上に盛り上がるんだなと感じました。たとえばスポーツの話題だと、相手がある程度わかっていなければ話が続かないですよね。でも食は、生まれてから何十年間、全員が触れてきたもの。誰でもなにかしら話すことがあります。きっかけさえ提示すれば、話が弾むんですよね。

 

食の好みの相性だけでパートナーを決めるのは難しいかもしれませんが、他の情報を補うものとして、とても有効な情報なのではないかと思いました。

 

通常の婚活では、最初は職業や年収、身長といった情報でマッチングする場合が多いと思いますが、食の好みを取り入れることでその後の生活がより豊かになったり、仲がより深まったりする。新たな可能性に気づけましたね。

 

「ぴったり合う食」と「健康的な食」を実現し、日本中を幸せに。

 

━━味覚嗜好判定キットをどんな事業にしていきたいと考えていますか?これからの展望を教えてください。

 

まずは「個人の食事嗜好に合わせた食を提供していく」ことを主眼として、レストランなどでぴったりのコース料理を提供する取り組みを進めていきたいです。今はテスト段階ですが、いずれ事業として本格的にスタートしたいですね。

 

その後は、特別な場だけでなく、日常でも活用できる商品に落とし込めたらいいですね。一食一食を選ぶときに使える商品です。たとえば、世の中にはたくさんのラーメンが販売されていますが、種類が多くて選ぶのが大変。そんなときに自分の味覚に合った商品を簡単に知ることができたらとても便利だと思うんです。

 

━━面白そうですね。なんだかわくわくします。

 

ありがとうございます。でもここで終わりではありません。将来的には、カゴメが大切にしてきた「食による健康寿命の延伸」に活用したいと考えています。

 

たとえば、薄味好きな人がたくさんいますが、世の中の加工食品は濃い味に作られているものが多い。本当はもっと薄味で十分な人でも濃い味を食べざるを得なくなり、必要以上に塩分を摂ってしまっています。それは健康にとってよくないですよね。それを変えていきたいです。

 

逆に濃い味好きの人に対しては、ぴったり合う減塩食を提供するのに開発中の技術が役立ちそうです。塩分を下げる必要があるときに、塩分だけを下げるとおいしくなくなってしまう場合もあります。でも、「別の香辛料が好き」「こういう辛さが好き」といった好みがわかれば、それを上手く組み合わせてよりおいしく感じられる減塩食を作れるかもしれません。

 

━━とても画期的なアイデアだと感じました。わたしも加工食品や外食の味が濃くて食べられないときがあって困っているので、実現したらぜひ利用したいです。

 

世の中には薄味好きな人が意外とたくさんいらっしゃるんですよね。毎回調理をするのも大変だから加工食品や外食を上手く使いたいけれど、濃くて食べられない、お子さんにはあまり食べさせたくない、そんな声をよく聞きます。

 

薄い味が好きな人もたくさんいるんですよ、とデータで示せれば、加工食品メーカーも薄味のものを作るようになり、ニーズに合ったものが提供される未来が訪れるのではないかと思います。

 

こうした取り組みによって世の中の塩分摂取量が減り、みんながいつのまにか健康になっている。そうなったら幸せですよね。これが今やりたいことです。

 

━━ 熱い想いがひしひしと伝わってきました。誰もがおいしく健康的な食事を楽しめる世界をめざして、これからも共にがんばっていきましょう。本日はありがとうございました。

 

<カゴメ株式会社について>

会社名:カゴメ株式会社
代表者:代表取締役社長 山口 聡
本社所在地 愛知県名古屋市中区錦3丁目14番15号
創業:1899年(明治32年)
設立:1949年(昭和24年)
公式HP:https://www.kagome.co.jp

 

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